【考察】コナンが掲げる正義とは?彼が唯一手を染めた『犯罪』

【考察】コナンが掲げる正義とは?彼が唯一手を染めた『犯罪』

2018年公開の劇場版『ゼロの執行人』では、『真実vs正義』というキャッチコピーが使われていました。

真実はいつもひとつ、でも正義はひとつではないというテーマが根底に流れています。

 

江戸川コナン=工藤新一は、連載当初から常に正義を体現したキャラクターとして描かれてきました。

ですが、彼は一度だけ犯罪に手を染めてしまっています。

その事件について、自分なりに考察してみました。

 

コナンを変えた浅井成実の死

本題に入る前に、コナンの信念について述べておきます。

江戸川コナン=工藤新一の信念については、浅井成実の存在抜きには語ることができません。

浅井成実はアニメ第11話、単行本第7巻『ピアノソナタ「月光」殺人事件』に登場したキャラクターです。

 

『ピアノソナタ「月光」殺人事件』のあらすじ

ある日、毛利探偵事務所に麻生圭二という人物から調査の依頼状が届く。

依頼料の50万円が既に振り込まれていたため、月影島に向かった小五郎、蘭、コナン。

しかし島に着いてみると、麻生圭二は10年以上前に亡くなっていることが判明。

その夜、島の公民館でピアノソナタ「月光」が鳴り響き、連続殺人事件が幕を開けた…。

 

浅井成実は、当初『あさいなるみ』という名の女医として登場しました。

しかし実は『あさいせいじ』という名前の男であること、麻生圭二の息子であることが明らかになりました。

読み方を変えれば男女どちらでも通用する名前だったために、性別を偽って父の敵討ちを決行したのです。

 

 

 

浅井成実がコナンに与えた影響

このエピソードは、真相が明らかになった後に真犯人が自殺してしまうという珍しい結末を迎えました。

このことはコナンの大きなトラウマになり、『推理で犯人を追い詰めて結果的に死なせてしまった』という大きな罪悪感を彼に植え付けています。

その結果として、コナンはその後の事件の犯人たちには次のような態度を見せるようになりました。

  • 犯人を推理で追い詰めない
  • 犯人が自殺を考えていることを見抜いたら阻止する
  • 犯人を諭すこともある

 

実際に犯人の命を守ろうとしているエピソードを挙げてみます。

 

名家連続殺人事件

アニメ第77~78話、単行本第15~16巻収録の『名家連続殺人事件』では、真犯人が自殺するためポットの中にガソリンを入れていました。

しかしそのことを見抜いたコナンは、犯人が自殺を図る前にポットからガソリンを抜いています。

 

鳥取クモ屋敷の怪

アニメ第166~168話、単行本第25巻収録の『鳥取クモ屋敷の怪』は、愛する女性を自殺という形で失った男性が、復讐のために連続殺人事件を起こしました。

しかし実はその自殺の原因を作ったのが(おそらく)犯人自身であったという悲しい結末が明らかになりました。

この時、服部平次が犯人に真相を告げてしまったのですが、コナンは『よせ服部!』と否定的な態度を見せています。

 

アイドル達の秘密

アニメ第249~250話、単行本第32巻収録の『アイドル達の秘密』では、犯人が薬を飲んで自殺を図ります。

それを見抜いたコナンは必死に救命措置を取り、犯人は一命をとりとめました。

 

ストラディバリウスの不協和音

アニメ第385~387話、単行本46巻収録の『ストラディバリウスの不協和音』では、コナンは犯人が自殺しようとしていることを見抜いています。

犯人が窓から飛び降りることを予想し、あらかじめ窓の下に消防のマットを用意してもらっていたのでした。

 

番外:浪花の連続殺人事件

アニメ第118話、単行本19巻収録の『浪花の連続殺人事件』では、拳銃自殺しようとした犯人を服部平次が必死で止めます。

平次の行動はコナンに言われた『推理で犯人を追い詰めて死なせてはいけない』という言葉に影響されてのことでした。

浅井成実の死は、間接的に服部平次にも影響を与えたことがわかります。

 

 

これらのエピソードがすべてではありませんが、『ピアノソナタ「月光」殺人事件』以降、コナンは犯人を死なせないことを徹底しているのがわかりますね。

 

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赤と黒のクラッシュシリーズにおける楠田陸道の死

犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させちまう探偵は殺人者と変わらねーよ』と平次に語っていたコナン。

彼にとっては犯罪者の命も被害者の命と等しい重さがあるはずなのですが…そんなコナンが、一度だけ犯罪行為に手を染めています。

 

コナンは楠田陸道の遺体を損壊させた

アニメ第495~504話、単行本第57~59巻収録の『赤と黒のクラッシュ』シリーズは、コナン、赤井秀一、水無怜奈(キール)が共謀して、赤井秀一の死を偽装するという大胆なエピソードになっていました。

 

キールによる赤井秀一殺害が偽装で、彼が実は生きていたと判明したのはアニメ第779~783話、単行本第84~85巻の『緋色シリーズ』でした。

それに先駆けて、劇場版『異次元の狙撃手』でも彼の生存が示唆されています。

 

赤井秀一の死を偽装するために重要な役割を担ったのが、楠田陸道でした。

黒の組織の構成員であった楠田陸道は、FBIの追跡から逃れられないとみるや拳銃自殺を図りました。

紆余曲折を経て炎上した車内から焼死体が見つかり、それが赤井秀一であると日本警察やFBIに証明させることで、コナンたちはジンたちに赤井秀一の死を信じ込ませることに成功したのですが…その焼死体は、自殺した楠田陸道のものでした。

 

亡くなった原因が自殺であるとはいえ、遺体を燃やしてしまうというのは死体損壊・遺棄罪にあたります。

 

楠田陸道の遺体を乗せた車に火を放ったのはキールですが、作戦自体を立案したのはコナンと赤井秀一。

コナンは楠田陸道の遺体を損壊するという犯罪行為を、作戦に組み込んでしまったのです。

 

火をつける前に、キールは楠田陸道の遺体に『悪く…思わないでね…』と心の中で語り掛けています。

彼女だけは楠田陸道の遺体に対する仕打ちに罪悪感を持っていたことが見てとれます。

 

これは、コナンの『正義』に相反する行いなのではないでしょうか?

 

 

ゼロの執行人における『自ら行った違法捜査は自ら片をつける』

奇しくも、2018年公開の劇場版『ゼロの執行人』において、降谷零が印象的なセリフを残しています。

自ら行った違法捜査は自ら片をつける

というものです。

公安は目的のために違法捜査を行うこともあるが、その後自分でしっかり片をつけるべきであるという降谷零の信念を表しています。

 

コナンは『赤と黒のクラッシュ』で赤井秀一を生かすために楠田陸道の遺体を損壊させてしまいましたが、この違法行為に対してコナン自らが片をつけることはできるのでしょうか?

現実的に考えると

  • 楠田陸道は犯罪組織の構成員である
  • 家族がいるのか不明
  • そもそも楠田陸道が本名であるかも不明

これらが問題として挙げられますから、楠田陸道の遺体をどうすることもできなかったのかもしれません。

そのため遺体を処理する方法として、赤井秀一とすり替わる作戦を練ったということも考えられますが…。

コナンの探偵としての信念から鑑みると、どうしてこんなことをしてしまったのか首をかしげざるを得ないのです。

 

楠田陸道の遺体を利用した合理的な理由はあった?

もしかしたら、コナンには楠田陸道の遺体を利用する合理的な理由があったのでしょうか。

赤井秀一を生かすという目的があるから許される?

赤井秀一は黒の組織に『シルバーブレット』と呼ばれて恐れられています。

そのため、黒の組織を潰すためには、赤井秀一の存在が必要不可欠であるとコナンは考えたはずです。

その赤井秀一を生かすためなら、楠田陸道の遺体を損壊することは些末なことだと考えたのかもしれません。

また『殺害』ではなく『自殺した遺体を利用する』という状況だったために、罪悪感をあまり感じなかった可能性があります。

 

安室透=降谷零=公安を頼る?

緋色シリーズ』において、降谷零は楠田陸道の遺体を使ったトリックをすべて見抜いていました。

沖矢昴=赤井秀一であることこそ証明できませんでしたが、それ以外のことはほとんど理解していると言っていいでしょう。

もちろん、作戦を立案したのがコナンであることにも気づいていました。

 

赤井秀一を生かすことが組織の壊滅につながると降谷零が納得しているのであれば、公安がコナンと赤井秀一の行為をもみ消してくれるかもしれませんが…。

『赤と黒のクラッシュ』の段階では、まだ降谷零(バーボン)は作品に登場していませんでした。

そのため、公安にどうにかしてもらおうという思惑で遺体を利用したという線はあり得ません。

 

FBIの違法捜査や銃刀法違反等と合わせて超法規的措置がとられるかも?

楠田陸道の遺体を利用することは、もしかしたら赤井秀一の方から言い出したのかもしれません。

そもそも、赤井秀一やジョディたちFBIは、日本でやりたい放題やっています。

  • 観光ビザで来日して黒の組織を違法捜査している
  • 銃刀法違反
  • 道路交通法違反

などですね。

僕の日本から出ていけ』と降谷零が言いたくなるのも納得です。

厳重な処分が下ることを覚悟したうえで黒の組織を潰そうとしているため、『今更楠田陸道の遺体を損壊したところで…』という意識があったのかもしれません。

 

降谷零としてはさっさと日本から追い出してアメリカに強制送還させたいところでしょうが…。

黒の組織が壊滅したら、そのための違法捜査の数々は超法規的措置ですべて罪に問わないことになるのかもしれませんね。

 

さいごに

いろいろ考えてはみましたが、結局は『まあ漫画だから』で決着がついてしまう問題ではあるんですよね(笑)

ただ、正義を体現した存在であるコナンに、どうして青山先生がこのようなことをさせたのかという疑問はあります。

それこそ赤井秀一を生かすためならなりふり構わないという姿勢を見せたかったのでしょうか?

犯人の命すら大切にしてきたコナンが、たった一度でも大きな罪を犯したことに、何か意味があるように思えてなりません。

この先原作で明かされる時が来るとも思えませんが…。

もし『楠田陸道の親戚』などが登場してきたら…と考えると、ちょっとぞっとしてしまいますね。

 

コナンの『罪』について、あなたはどう思いますか?