2023年映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』感想(ネタバレあり)

2023年映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』感想(ネタバレあり)

2023年4月14日、劇場版第26作目にあたる『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が公開されました!

昨年の『ハロウィンの花嫁』に続き、すごいクオリティの作品でした!

この記事を書いている時点で6回鑑賞しまして、落ち着いてきましたので感想をまとめました。

ネタバレが大いに含まれますので、未鑑賞の方・ネタバレを知りたくない方はご注意ください。




『黒鉄の魚影』感想(ネタバレあり)

今回のメインキャラクターは灰原哀ですが、黒ずくめの組織のメンバーがかつてないほど魅力的に描かれていた作品でした。

ということで、この記事ではあえて組織のメンバーについての感想を中心に書いていきます。

 

今回のMVPはキール!

公開前にアニメールや雑誌で監督や脚本家さんのインタビューを読んでいたので、今回はキールとウォッカがかなり活躍しそうだぞ?という心構えはできていたのですが。

まさかキールがこんなに丁寧に描写されるとは思いませんでした…!

 

まず映画自体がキールから始まるのが意外でした。

ダメ……そっちに逃げないで……せめて私に捕まって……!

原作を読んでいる人なら、このセリフだけでキールがどういう状況に置かれていて何をしようとしているのか、大体の見当がつくというインパクト抜群の掴みです。

ドイツ語でニーナに川に飛び込むよう話しかけた時、キールの手元がアップになってニーナがはっとした表情になります。

一瞬なのと画面が全体的に黒くてわかりにくいのですが、あのシーンでは「キールの指が銃の引鉄にかかっていない」のを見せているんですよね。

キールの苦労も空しく、ニーナは結局ジンに殺されてしまうわけですが…。

 

ウォッカがジンの指示で哀ちゃんを誘拐するぞとなった時、ベルモットとバーボンは協力を断ってさっさと潜水艦を降ります。

キールも協力は断ったのに、ずっと潜水艦に乗り続けているんですよね。

今回は同じNOCであってもキールとバーボンでは立ち回れる範囲が違うんだ、というのが非常に上手く対比されていました。

バーボンはコナンと連絡がとれるので、彼に情報を流し、また黒田管理官とも秘密裏に連絡をとっています。

一方キールはアメリカのCIAなので、日本での潜入捜査においてあまり本国のサポートは期待できない立場。

そのため潜水艦にとどまり続け、さらわれてきた直美と哀ちゃんを逃がすために必死で立ち回ってくれました。

 

 

また、直美が父・マリオを殺されそうになっている時、キールの回想でイーサン・本堂が出てきたのが熱かったですね…!

まさか劇場版で本堂親子のシーンが描かれるなんて!

キールがなぜ組織にNOCとして留まっているのか、なぜ直美や哀ちゃんを助けようとしているのか…。

彼女の行動原理を短時間できっちり見せてくれたのが本当に感動的でした。

また、レバーを引こうとするジンを命がけで止めてくれたのもカッコよかったですよね。

今作のMVPは間違いなくキールだったと思います。

 

 

組織の高木刑事枠・ウォッカ

コナンの第1話から登場しているのに、これまで深掘りされてこなかったウォッカ。

今回はウォッカの良さもこれでもかと描かれていました!

 

ジン不在時はコードネーム持ちのメンバーをまとめる中間管理職的な役割。

カーチェイスもこなしちゃう。

質問をしてきたキールには優しく教えてあげる一面もあったり。

一方で直美を脅すためなら直美の父・マリオを殺すことも厭わない冷酷な一面も。

そしてジンの兄貴に対する圧倒的な愛…!

いやもうすごい、こんなにウォッカが魅力的に描かれることある!?と度肝を抜かれました。

 

立川監督や脚本の櫻井さんが「ウォッカは組織の高木刑事枠、動かしやすい」と仰っていた理由がよくわかりました(笑)

 

公式サイトにアップされたインタビューで、立木さんがジンに対する愛を切々と語ってらっしゃったのもめちゃくちゃ良かったですね。

(ジンに)嫌われたらおしまいだって気持ちで演じています。

殺されるよりなにより嫌われることが嫌なんじゃないかなと思っています。

素晴らしい解釈です…!

 

インタビュー全文はこちらから読めます。

 

劇場版コナン公式サイト
オフィシャルインタビュー

 

悪の華を貫いたジン

劇場版オリジナルの組織メンバーが出てくる劇場版といえば、「漆黒の追跡者」と「純黒の悪夢」がありました。

この2作の共通点としては

  • 劇場版オリジナルキャラはコナンサイドのキャラを守って死ぬ
  • ジンたちはコナンサイドの活躍によって退散させられる

の2点があげられます。

ここで特筆したいのは後者についてです。

 

劇場版では原作よりもストーリー展開をすすめるわけにはいかないので、コナンサイドに組織が勝つことがあってはならないんですよね。

なのでいつも追い払われることになって、組織は無能だのなんだのネタにされてしまうのですが…。

黒鉄の魚影では、そのあたりが非常にうまく配慮されていたと思います。

  • 組織のメンバーが一枚岩ではないことが描写されていた
  • 老若認証システムをつぶすよう指示したのはボスで、実行したのはベルモットであり、ジンはコナンに騙されたわけではない
  • パシフィック・ブイの破壊には成功している
  • 潜水艦を攻撃されたものの、最終的にはジンが自爆させたのであり、コナンサイドに止めを刺されたわけではない

そして特に感動したのが、ジンの最後のセリフ!

黒鉄の魚影でジンが最後に言うセリフは

さぁ…どうだったかな

です。

ニヤリと笑みを浮かべて、自分にとって不要な存在はあっさりと切り捨ててみせる描写!

「コナンサイドに敗走させられる」わけではなく、最後まできちんと「悪の華」のまま終わらせてもらえたのが感激でした。

そもそもの登場シーンも、「キールの肩を貫通させてニーナを射殺」でしたからね……素晴らしい悪人ぶりでした。

 

たださすがに「クソシステム」は笑ってしまいました。

ポエムかなぐり捨ててる~!?

はるばるドイツから戻ってきたのに、肝心のシェリーらしき子供には逃げられてるわ老若認証は使えないわで、さすがのジンも限界を超えるとああなるんですね…。

可愛かったです(笑)

 

あと今回全体的に作画が綺麗でしたが、ジンもめちゃくちゃ気合入ってましたよね。

ヘリから降りてくるシーンなどすごかったです。

ジンは長い銀髪がめちゃくちゃ映えますが、その描写も美しかったですね……大満足でした。

初見で唯一青山先生原画がどこかわからなかったのもジンでした……。

作画の方が青山先生の絵柄に寄せてた感じ。すごい。

 

 

バーボンの特殊な立ち位置

ゼロの執行人」や「ハロウィンの花嫁」では、7安室や降谷としての姿が描かれてきた降谷零。

今回はバーボンとして登場するということで、ずっと組織の一員として動くのかな?と公開前は思っていたのですが。

 

ふたを開けてみたら、きっちりバーボンとして動いていたのは直美の誘拐とラムとの電話のみでしたね。

あとはコナンくんに電話で情報を流してあげたり、「バーボンとしての立場を利用して動く安室(降谷)」が描かれていて、これはこれですごいな…!と感激しました。

 

キールの項でも述べましたが、バーボンは今回早々に潜水艦を降りましたし、自分の国で活動しているので、割と自由に動くことが可能なんですよね。

哀ちゃんを助けるためだったり、パシフィック・ブイに危険が迫っていることをコナンくんに電話してくれたの、バーボンにしかできない役回りなので本当においしいなと。

 

コナン「早くみんなに知らせないと!」

安室「いや、それはもう済んだ」

黒田「繰り返す!民間人は至急退避!」

この流れが非常にかっこよくて好きですね……!

直接安室と黒田が連絡を取り合うシーンを描かなくても、安室が根回しをしたことはものすごくわかりやすく伝わるシーン。

バーボンとして得た情報を公安に流しているので、まさに優秀なNOC~!と大興奮してしまうシーンでした。

 

安室・降谷の目」と「バーボンの目」が描き分けられているのは有名な話ですが、黒鉄の魚影ではほとんどバーボンの目なんですよね。

コナンと電話している時は安室の目に戻ってるかな?と注視してみたのですが、どうもそういうわけでもなさそうで。

(横顔だと確認しにくかったので、ちょっと断言できないのですが)

 

明確に「降谷の目」に戻ったのは、風見さんに声をかけられた後です。

風見さんに「…降谷さん?」と名前を呼ばれた後、降谷の目に戻ります。

彼はバーボンとして動きつつ、並行して公安警察官としての仕事もしているわけで。

そしてそのスイッチの切り替え役として風見さんを登場させたのか…!というのも感動ポイントでした。

 

というか今回風見さんが登場したのが一番の驚きだったんですけど!

フレームインしてきた時に腰抜かしそうになりました。

レギュラーキャラ以外が2年連続で劇場版に出るのはめったにないことですよね。

安室さんが2年連続で登場すると分かった時にもびっくりしたのに、風見さんもか~!と。

今回は女性に殴られなくてよかったです、風見さん(笑)

 

 

魅力的すぎるゲストキャラ・ピンガ

もうなんて言ったらいいか…とにかくあまりにも魅力的なゲストキャラが登場して、びっくりしてしまいました。

端的に言えば、ピンガくんにどハマりしました。

 

私はピンガ役の声優・村瀬歩さんの役柄は「ハイキュー!!」の日向翔陽しか存じ上げなかったので、グレースの声を聞いてもどなたかわからなかったんです。

劇中でグレースの声からあまりにもナチュラルにピンガの声に切り替わった時も、まさか1人の声優さんが演じ分けていたとは思わず…。

エンドロールを見て仰天しました。

「男性声優が女性と男性を演じ分ける」ことにもびっくりですが、まずそのようなキャラクターが用意されたことがすごすぎます。

 

 

グレースはとにかく可愛い。

カップの口紅をぬぐう動作や、コナンが手で2を表したことに気づかないなど、最初から怪しすぎはしましたが(笑)

でもグレース可愛かったんです…。

 

ウォッカと一緒に哀ちゃんを誘拐しに来た時は、蘭ちゃんにちょっと押され気味なのが可愛かったですね。

でも細身で身軽、足技を使ったラテン系の戦い方がコナンでは珍しく、新鮮でした。

 

サンデーSの付録・魚影の書でピンガが25歳と判明したわけですが、まず「若い!」とびっくりしました。

劇中でグレースは「5年前に技術職で採用された」と言っていたので、ピンガが5年間潜入していたことは確実なんですよね。

 

ピンガの変装はベルモットのようなベリベリ変装ではありません。

メイク+ウィッグなどの小道具+自分で声色を変えるという変装なので、実在の「グレース」という人物に成り代わったわけではなく、架空の人物を作り出したはず。

5年間ずっと異性を演じ続け、かつエンジニアとして働き続けていたわけですから、あの若さで相当優秀な人材だったことがうかがえます。

ジンにライバル意識むき出しなのと煽り耐性が低いのも、25歳という若さなら頷けるなあと。

そりゃラムもピンガを気に入りますよね。

 

というかちょっと口が悪いピンガくんが、綺麗で優しそうなグレースを演じるために全身ぴかぴかにして(初登場時はスカート履いてましたし…)体型も女性に見えるように工夫していたっていうのが……なんて真面目で涙ぐましい努力……!

 

ピンガくんの最期も衝撃的でした。

最後の最後でコナンを守って死んでいったアイリッシュ、探偵団と哀ちゃんを助けるために死んだキュラソー。

この2人とは違って、ピンガは最後まで悪のままでした。

ジンに切り捨てられたことを悟り、彼は潜水艦の爆発に巻き込まれながら笑ったんですよね。

あの笑顔のインパクトと言ったら…!

 

最後まで悪を貫いたピンガ、ものすごくカッコよかったです。

あの距離で、かつ水中での爆発に巻き込まれたなら生きている可能性は限りなく低いでしょうが…。

生きていてほしいなあ、と思ってしまいます。

本当に魅力的なキャラクターでした。

 

余談ですが、ピンガくんのグッズが発売されないのが辛すぎて、お酒のピンガを買いました。

我ながら順調にピンガくんに狂っているなあと思います。

概念としてのグッズ…。

強く美しく愛情深いヒロイン・毛利蘭

灰原哀を語るうえで欠かせない存在が毛利蘭です。

二元ミステリーで蘭ちゃんが体を張って哀ちゃんを守ったシーンが本当に大好きなのですが、「黒鉄の魚影」でも蘭ちゃんは愛情深いヒロインでしたね。

 

哀ちゃんがさらわれた時、コナンは追うのに必死で蘭を起こさなかった。

でも蘭は自分で目を覚まし、躊躇なく窓から飛び出してピンガと闘ってくれました。

蘭ちゃんが本当に美しくて…!

立川監督が「今回の蘭は地に足のついたアクション」と仰っていた通り、過去作ほど人間離れした感じがなかったのがリアルで良かったです。

ピンガを圧倒していた蘭ちゃん、本当にカッコよかったですね。

 

残念ながら今回は新一と蘭ちゃんのラブなシーンはあまりありませんが、キャンティに狙われた蘭ちゃんをしっかりコナンくんが守ってくれたので満足です。

 

誘拐された哀ちゃんが戻って来た時も、涙を浮かべて哀ちゃんを抱きしめて…本当に美しいシーンでした。

哀ちゃんももはや蘭ちゃんを明美さんと重ねて見ているんですよね…。

蘭ちゃんと哀ちゃんにしかない絆が生まれているわけで、でも多分蘭ちゃんの方はその尊さを理解できていないというのがエモいところです。

 

 

ラストで哀ちゃんは蘭ちゃんにキスをして

ちゃんと返したわよ、あなたの唇

でエンドロールに突入するわけですが。

蘭ちゃんにコナンくんの唇を「返した」のは、コナンへの恋愛感情を断ち切るための、哀ちゃんなりの儀式だったんですよね。

まさか劇場版で哀ちゃんからコナンくんに向けられた恋愛感情の結末が描かれるとは思わず……驚きました。

劇場版でやったということは、もうこの先原作で描かれることはない……?

哀ちゃんと蘭ちゃんのキスシーンは青山先生ご自身が出された案なので、原作じゃなくて映画でやろう!と思われたということで…?

 

哀ちゃんは確かにコナンくんに恋愛感情を抱いていたけれど、今となっては蘭ちゃんのことも大切な存在になっているわけで。

2人の間に割り込むつもりはないわよ…という哀ちゃんの心の声が聞こえてくるようでした。

 

 

灰原哀と阿笠博士&少年探偵団の絆

阿笠博士は予告の段階で泣き顔と

ぶつけてでも止めたるわい!

が出ていたので、ああ今回は博士も活躍するぞ…すごいぞ…!と思っていたのですが。

もう本当にすごかったですね!

 

カーチェイスはサントラがすごく素敵なのもあって、大迫力!

博士の「ぶつけてでも止めたるわい!」が本当にかっこよかったです。何回でも聞きたいセリフ。

さらわれた哀ちゃんを想って泣く博士も感動的で…。

TVアニメで放送されたプレストーリー「灰原を狙うカメラ」でも、博士は哀ちゃんのことを「たった1人の家族」と言っていて…。

博士と哀ちゃんにはずっと一緒に生きて行ってほしいんだ…。

 

 

そして探偵団。

今回本人たちの出番は少なかったのですが、哀ちゃんに影響を与え、哀ちゃんを変えた存在としての存在感はすごかったですよね。

哀ちゃんが直美に

子どもの言葉や行動で、人生が変わることもある。私はそれを体験して変われた。

と言っていましたが、これは言うまでもなく探偵団のことですよね。

特に歩美ちゃんかな…。

 

劇場版「天国へのカウントダウン」では生きることを諦めていた哀ちゃんと哀ちゃんを必死で生かそうとする探偵団が描かれていましたが、今作では探偵団の言葉や行動で変わった哀ちゃんが、自らの手で未来を切り開こうとする。

それがとても感動的でした。

 

エンドロールで探偵団が帰って来たコナンくんたちを出迎えるシーンが描かれていましたが、涙を浮かべている歩美ちゃんが印象的でした。

哀ちゃんが風邪をひいたって聞いて、本当に心配していたんですよね。

歩美ちゃんと哀ちゃんの絆も大好きです。

哀ちゃんを変えてくれてありがとう。

 

来年のメインキャラは…

来年の劇場版の予告で喋ったのは、怪盗キッドと服部平次でした!

平次は再来年の大阪万博に合わせてくると予想していたので、ちょっと意外でした。

喋っていたセリフが「キッドVS高明 狙われた唇」を彷彿とさせるものでしたが……。

あのエピソードの延長線上のようなエピソードになるんでしょうか?

もしそうなら、長野県警の諸伏高明もワンチャン出番ある!?と期待してしまう自分がいます。

諸伏警部、まだ劇場版出ていないんですよね~!

そろそろ出てほしいです、本当に。

 

 

総評

「黒鉄の魚影」は原作を知らなくても面白いけれど、原作を知っているとなお面白い!集大成のような作品でした。

過去の哀ちゃん関連エピソードや劇場版から色んな要素をオマージュとして取り入れていて、長年コナンファンをやっている人ほど感動が大きくなる作品だなあと思いました。

 

哀ちゃんを取り巻く人間関係をうまく描きつつ、黒ずくめの組織のメンバーまで深掘りして新たな一面を見せるすごさ。

そしてピンガをはじめ、劇場版オリジナルキャラであるパシフィック・ブイの牧野局長やエンジニアたちもとても魅力的でした。

書き忘れていましたが、牧野局長役のゲスト声優・沢村一樹さん、あまりにも上手すぎて最後はゲスト声優だということを忘れてしまうくらいでした。

牧野局長、かっこよかったです!

 

劇場版コナン初の興行収入100億円突破も確実ですし、私もまだまだ映画館に足を運びたいと思います。

 

 

余談ですが…。

最後にコナンくんがキック力増強シューズで蹴ったのは何?というツイートをちらほら見かけました。

そういうちょっとわかりにくいところ、ノベライズではとてもわかりやすくなっているのでお勧めです!