2022年映画『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』感想(ネタバレあり)
2022年4月15日、劇場版第25作目にあたる『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』が公開されました!
個人的に、過去(少なくともここ数年の中では)最高の出来ではないかと思っています。
まだまだ繰り返し鑑賞してかみしめたいところですが、ざっくり感想をまとめました。
ネタバレが大いに含まれますので、未鑑賞の方・ネタバレを知りたくない方はご注意ください。
『ハロウィンの花嫁』感想(ネタバレあり)
佐藤刑事と高木刑事の結婚式!?
映画の導入は佐藤刑事と高木刑事の結婚式から。
ウェディングドレスを着た佐藤刑事と並んでいたのが松本管理官だったので、懐かしさで胸がいっぱいになりました。
昇進されたので、もう出てこなくなっちゃいましたもんね。
結局この結婚式は本物じゃなかったわけですが(笑)少しだけでも高木刑事と佐藤刑事の結婚式の雰囲気が味わえてよかったです。
まあ映画で結婚なんてするわけないですもんね…。
原作でも結婚のハードル高いので。
訓練とわかっていても赤面して緊張している高木刑事が可愛かったですね。
佐藤刑事も本当にお美しかったです。
由美さんはここで佐藤刑事を気遣っているのが唯一のセリフだったかな?
大勢いる中でただ一人由美さんだけが佐藤刑事をいたわり心配しているのが本当によかったです。
たった一言のセリフしかないのに好感度が爆上がりでした。
また、この結婚式と降谷&風見のシーンが交互に描かれていたのがよかったです。
緩急が効いていて、これからすごい物語が始まるぞという勢いを感じました。
ものすごくカッコよく退場する小五郎
予告にもありましたが、哀ちゃんが爆風で車道に飛ばされ、小五郎がかばうシーン。
予告を見た段階では何とか回避するんだろうなと楽観的に考えてたので、がっつり事故っていて衝撃でした。
哀ちゃんが吹き飛ばされたのを見て躊躇うことなく哀ちゃんを助けに行った小五郎が本当にカッコよかったです。
今作は高木刑事&佐藤刑事&警察学校組がメインという触れ込みだったので、ちょっと登場人物が多いんですよね。
そのため小五郎と蘭を事件現場から遠ざけて活躍する人数を減らすために、小五郎を退場させたんだろうなと思います。
ですが哀ちゃんを守ってこれだけカッコよく退場したので、「小五郎の出番がない!」みたいな不満はまったくないですね。
すっごくカッコよかったです…!
ところどころに仕込まれる小ネタと笑い
私は大好きな演出でしたが、好き嫌いが分かれる部分かもしれません。
メタ的な小ネタやシリアスなシーンにちょくちょくクスッとなる演出が仕込まれていたのが印象的でした。
麻酔に耐性があって痛み止めが効かない小五郎。
松田の「やっぱ普通じゃねぇな、この町……」発言。
爆弾が仕掛けられた部屋からコナンが脱出する際、探偵団やコナンがちょっとコミカルに描かれたりもしていました。
風見さん・目暮警部・高木刑事&佐藤刑事が渋谷中央警察署の会議室で情報交換をしていた際も、真面目な話が続いていたのに高木刑事が「実は僕、科学・工学系が全然ダメで…」と場の空気を緩めるような発言がはさまれたり。
こういう笑えるシーンを入れてくるの、見ている側としては集中が切れない程度に緊張感が緩むので、結構いいなと感じました。
小五郎のシーンや松田の発言の部分なんかは映画館でもちょっと笑いが起こっていましたし、子ども受けもしそうでいいですよね。
貧乏くじを引かされるキャラクターがいない爽快感
これが今回とにかく嬉しかったところです。
コナンの映画って展開の都合上、自分勝手な言動をして周囲に迷惑をかけたり大ピンチの局面を作り出す、いわゆる『貧乏くじを引かされるキャラクター』がいることが結構あるんですよね。
観終わった後に「あのシーンの〇〇はなぁ…」とモヤモヤしてしまうことがあるので、そういうシーンがあるとがっかりしてしまうのですが。
ハロウィンの花嫁は、貧乏くじを引かされるキャラクターがいないんです!
それどころか、マイナスのシーンがあるキャラクターは全員プラスの要素も入れて失敗をチャラにしてもらっているのが印象的でした。
- 少年探偵団→爆弾のある建物に行ったのは犯人の策略なので、子どもたちには非がない。クライマックスでとても頑張って偉い。
- 千葉刑事→捕まる直前にカッコよく背負い投げをキメているので、プラマイゼロ。
- 風見さん→降谷さんが首輪爆弾をつけられる原因を作ってしまったり、佐藤刑事にビンタされたりしているが、首輪爆弾を解体したりラストで中和剤の放水指示を出していたりとオイシイ描写あり。
- 蘭→犯人の前で「子ども」発言をしたことを気にしていたけど、あれは仕方ない。驚異的な記憶力でメモを再現してくれる。
- 白鳥警部→映画の中でのやらかしはないが、原作で高佐の仲を引っかき回したのをフォローしてもらっている。プラスしかない。
- エレニカたちや村中さん→クライマックスで探偵団と一緒に頑張ってくれるので、それまでのことは全部チャラになるほど好感度が上がる。
とにかくどのキャラにも細かく細かく見せ場が用意されていたんですよね。
由美は出番が少ないですが、佐藤刑事を気遣う姿が描かれていたので超好印象。
千葉くんを心配していた苗子ちゃんも可愛くて、短いシーンのみの出番なのに存在感がありました。
目暮警部も村中さんを叱咤する姿がカッコよかったです。
今回は登場人物がすごく多いのに、どのキャラも丁寧に扱ってくれていたことが本当に嬉しかったです。
鑑賞後に気持ちのいい余韻だけが残るので、見終わってすぐにリピートしたくなります。
各所に散りばめられている警察学校編のオマージュ
今回は警察学校組が重要な役どころを担う映画ということでしたが、何せ降谷以外の4人は全員故人なので、回想という形でしか登場させることができません。
にもかかわらずストーリーの根幹にうまく絡めていて驚きました。
多分時間的には短かったと思うのですが、活躍があまりにもカッコイイので大満足できました。
そして嬉しかったのが、警察学校編のオマージュが随所に散りばめられていたことです。
(本編のネタもありますが…)
他の方の感想を読んで気づいたこともあるのですが、
- 佐藤刑事と松田が解決した強盗事件・暴走バス・自殺志願者の制止→それぞれ警察学校編の伊達編・萩原編・諸伏編のオマージュ
- 廃ビルで爆弾を解体する松田・車のドアを盾にする伊達・敵から銃を奪う諸伏→彼らの死因を匂わせている
- プラーミャのワイヤーを撃ちぬいて切断する降谷→警察学校編・松田編のオマージュ
- 階段を駆け上がってきた諸伏が降谷を助ける→「裏切りのステージ」のif
- 探偵団と哀が落ちてくるコナンを広げた布で受け止める→警察学校編・諸伏編のオマージュ
- 降谷がプラーミャの右肩に掌底を叩き込む→警察学校編・伊達編での伊達からの教えを実行した
現時点では気づいたのはこれくらいですね。
脚本の大倉さんが執筆に取り掛かった時点ではまだ警察学校編の連載はスタートしていなかったので、ネームを資料として渡されたそうですが…。
そのネームの中からこれだけの要素を拾い上げ、うまく映画の中に落とし込んでくれたというのが凄すぎます。
松田・降谷・諸伏が3人とも伊達さんを班長呼びしていたのも良かったです。
プラーミャの爆弾を止めた松田、プラーミャの右肩に銃弾を撃ち込んだ諸伏、松田とコナンに爆弾を止めるヒントを与えていた萩原、そして松田や降谷を的確にアシストした伊達…。
4人がいたからプラーミャを止められた、という結末に集約していくのがとても気持ちよかったです。
特に萩原研二!
3年前の時点でもう亡くなっているのにどうするんだろう…と思ったら、警察学校時代に新一と蘭に会っていたというすごい設定が出てきた!
彼がいなかったら松田もコナンもどうしようもなかった、すべては萩原のおかげだった…というのが泣けました。
ハロウィンの花嫁は特に事前の予習が必要なわけでもなく、コナンは劇場版でしか見ないというライト層の方でもしっかり楽しめる作品だと思うのですが、警察学校編はぜひ読んでいただきたいです……!
2冊しかないので!上下巻なので!
読んでいるのといないのとでは、全然感動が違ってきます。
諸伏景光という男
個人的に諸伏景光が大変好きなので、彼の活躍が想像の何倍もカッコよく描かれていて度肝を抜かれました。
声を担当している緑川光さんが「5人の中では一番普通で、ぽやんとした可愛い感じ」と仰っているくらい、彼は警察学校編ではぽやぽやしている子だったんですよね。
それがコナン本編ではスコッチとして潜入捜査をしていて自決してしまったので、乱暴に言うとキャラがブレているな…という点がありました。
しかし今作では
- プラーミャに回し蹴りを入れて拳銃を奪い、すかさず構えつつゼロの安否を確認
- ゼロから「松田を頼む」と言われても的確な状況分析でゼロの援護に回る判断をする
- プラーミャに撃たれそうになる降谷を的確な(=プラーミャを殺さず肩を撃つ)狙撃で守る
- 逃げるプラーミャの足元を狙って撃つ(=殺さない)
という、警察官として大変優秀でカッコイイ姿を見せてくれました。
撃つときはためらいなく撃つ、しかし目的はあくまでも犯人を殺すことではない。
彼の正義感と狙撃の腕が際立つシーンでした。
萩原のお墓参りのシーンで
松田が来てくれて、萩原も喜んでるよな
と言っていましたが、この優しいセリフは景光でなければ出てこなかったと思います。
諸伏景光と言う人間の輪郭をくっきりさせてくれて、本当に嬉しかったです。
高木刑事っていったい何者?
今回のメインキャラクターのひとりである高木刑事。
彼はコナンや降谷さんのように人間をやめていないので(笑)派手なアクションはせず、等身大の警察官として描かれています。
しかし等身大なのはあくまでも肉体的な話であって、内面は「いったいどう育ったらこんな男になる!?」というくらい人間ができているんですよね。
今回の高木刑事の見せ場としては
- 訓練とはいえ佐藤刑事を身を挺して守る
- 弱音を吐いた佐藤刑事を叱咤する
- 「柴犬とドーベルマンを足して2で割った感じ」というヒントだけで松田を忠実に再現した演技を披露
- プラーミャの銃弾から佐藤刑事を守る
- 撃たれているのにそれを佐藤刑事に気づかせず、目の前のことに全力を尽くす
- 佐藤さんにキスをおねだり♡
いやもう高木刑事のいいところ全部詰め合わせましたみたいな、見せ場のオンパレードでしたね…!
エレニカたちの前で松田の演技をしていた時は、途中までは間違いなく松田を意識していたはずなのに、最後の
警察に任せろって言ってんだ!
は高木刑事本人の心からの言葉だったと思います。
この言葉がエレニカたちには刺さらなかったのが惜しいですね…。
高木刑事と佐藤刑事の結婚式は壮大な宣伝詐欺でしたが(笑)
きちんとラブシーンもあり、警察官としても一人の人間としても頑張る姿が描かれ、そしてCパートのオチにされる(笑)
高木刑事って本当にすごいキャラクターだなあ、と再認識した次第です。
クライマックスで流れる「あの歌」
名探偵コナンのメインテーマに歌詞を載せた「キミがいれば」
初期の劇場版ではよく挿入歌として使われていましたが、途中からふっつりと使われなくなってしまったんですよね。
それが!第25作目にして復活!
サントラを聞かずに映画を見に行ったので、クライマックスで「キミがいれば」が流れ始めて耳を疑いました。
懐かしくて涙が出ましたね…!
近年の劇場版コナンはいわゆる「人気イケメンキャラ」が持ち回りでメインを担当しています。
主人公のコナンが食われちゃってるなあ…と思うことすらあるのですが、今回の映画はちゃんと江戸川コナンが主人公で、どのキャラもちゃんと活躍。
そんな風にみんなが頑張るクライマックスで流れる「キミがいれば」は、初期の劇場版を思い出させてくれました。
今作の音楽担当は菅野祐悟さんでしたが、メインテーマを筆頭にどの曲もとにかくお洒落なイメージ。
「キミがいれば」以外も素晴らしい曲ばかりでした。
江戸川コナンだからこそ救えた人と救えなかった人
今回のゲストキャラ・エレニカ。
白石麻衣さんの熱演もあり、とても魅力的なキャラクターでした。
彼女は夫と息子のキリルをプラーミャに殺されています。
エレニカのコナンに対する言動から、キリルはおそらくコナンと同年代です。
「キリル、ママが仇をとるよ」と呟きプラーミャを撃とうとしたエレニカを、コナンが止めます。
エレニカの手を握って拳銃を下ろさせ、そして何も語らず、ただエレニカを抱きしめました。
彼女の中の殺意がほどけていったのは、キリルと同年代であるコナンのぬくもりがあったからこそ。
つまりエレニカを救うことができたのは江戸川コナンだったからであって、工藤新一だったら不可能だったことなんですね。
ここで思い出したいのが、「ピアノソナタ『月光』殺人事件」です。
コナンが唯一死なせてしまった成実先生。
成実先生はコナンを窓の外に放り投げ、自分は燃え盛る炎の中で亡くなってしまいました。
成実先生を救うことができなかったのは、コナンの体が小さかったからではないか。
あれが工藤新一であったなら、成実先生を無理やり外に連れ出してくることができたのではないか。
私はそう思ってしまうんですよね。
工藤新一ではなく江戸川コナンだったから、成実先生は救えず、エレニカを救えた。
成実先生はコナンにとってもファンにとっても切なくなるキャラクターですが、エレニカという女性をコナンに救わせることで少し慰められたような気がします。
江戸川コナンの決めゼリフ
コナンの決めゼリフと言えば、なんといっても「江戸川コナン…探偵さ」ですよね。
映画公開前に読んだ大倉さんのインタビューで「コナンが名乗る決めゼリフが特にうまく決まったと思う」と仰っていたので、今回はいつ誰に向かってどんな感じで言うのだろう、と本当にワクワクしていました。
誰かに問われての答えになるセリフですから、「君は一体何者なんだ?」と尋ねるキャラクターが必要になってくるわけですが。
今回はまさかの3人もいましたね(笑)
- 降谷「君はいったい何者なんだい?」
- プラーミャ「お前……いったい何者だ?」
- エレニカ「何者なの?あの子……」
降谷さんの問いは「……そんなことよりここはなんの施設なの?」とかわすコナン。
降谷さんも普通に施設の説明を始めていましたから、最初から答えが返ってくることは期待していなかったかも。
プラーミャに対しては「江戸川コナン……探偵さ」とばっちり答えていましたね!
プラーミャとコナンが一対一で対峙するシーンはやはりとても格好良かったです。
そしてクライマックス。
スケボーで宙を舞うコナンを見て、エレニカが驚いたように「何者なの?」と言いますが……。
その場にいないコナンの代わりに、歩美ちゃんが「コナンくーん!!」と叫んでくれました。
この演出がすっごく良かった!
歩美ちゃんにとっては頼れるコナンくんでしかないんですよね。
エレニカにとっても、それが答えでいいんだと思います。
揺れる警視庁の名セリフとエンディング「クロノスタシス」
今回の映画は、絆の物語でした。
萩原の言動がコナンと松田の心に残っていたから、みんなが救われた。
諸伏が放った銃弾がプラーミャの肩に残り、それが降谷零を守る形になった。
死してなお誰かを守り続けた警察学校組というのが強く強く印象に残りました。
「揺れる警視庁 1200万人の人質」で、松田と高木刑事がこんなことを言っていました。
人は死んだら、人の思い出の中でしか生きられないんですから…
ハロウィンの花嫁は、このセリフを根底に置いている作品のように思います。
コナンも降谷さんも高木刑事も佐藤刑事も、そしてエレニカたちも、失った誰かのことを覚えていたからこそ困難を乗り越えることができた。
その感動をさらに高めてくれるのが、主題歌の「クロノスタシス」です。
君のいない 世界の中で
君といた昨日に応えたい
大切な人を失った登場人物たちが必死で頑張った理由が、まさにここにあります。
登場人物たちに寄り添ってくれる優しい歌で、映画の余韻を気持ちよく残してくれる。
とても良い主題歌に恵まれたなあと感謝しかありません。
降谷さん以外の警察学校組は亡くなってしまっていますが、3年前の回想時点では松田・伊達・諸伏も「失った側」の人間だったんですよね。
彼らの心情にも触れることができてよかったな…。
総評
今作はストーリーもキャラクターの扱いも非常に丁寧で、目立つ粗がなかった素晴らしい作品でした。
初期からのファンにも最近からのファンにも、そして老若男女問わず幅広く支持される作品になったのではないかと思います。
あらためて「貧乏くじを引かされるキャラクターがいなかった」というのが本当に大きかったですね。
これは来年以降もぜひ気を付けて制作していただきたいな、と切望する部分です。
来年の予告ではジンが喋っていましたので、第20作「純黒の悪夢」以来の組織映画になりそうですね。
組織映画ならまたバーボンやスコッチ出せるよな…と思ったりもしましたが、さすがに2年連続の登板はないでしょうか。
アイリッシュやキュラソーのように劇場版限定のオリジナルキャラクターがまた出るかも?
色々考えてワクワクしています。
この先もまだまだ劇場版名探偵コナンが楽しめるって、本当に贅沢でありがたいことだと思います。
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